南アルプス全山縦走② 聖平

前の話 南ア全縦①光岳

2021.8.4 朝3時に起きて4時に出発した。

東の方は明るくなり始めていたがまだ星が瞬いている。ヘッドライトが必要だった。今日は聖平小屋まで進む予定だ。

昨日登ってきた小さな沢沿いの岩場は暗いとすぐに道を見失いそうで慎重に歩いたので思ったよりペースが上がらない。4時半頃には明るくなり始め、ヘッドライトは必要なくなった。

原生針葉樹の中を歩く。想像以上に初日の疲れが溜まっているようだった。少し前に飯豊連峰を歩いていたとはいえ長期縦走の初日25kgの荷物を背負い約2000mアップはさすがに体にこたえていたようだった。

太ももあたりの筋肉痛がひどい。易老岳の分岐を通過し聖岳方面に向かう。途中で一人おじさんと軽く会話を交わしたのだが、あまりにしんどすぎて無表情無愛想な返事になってしまっていた。ここまで体力が落ちていたとは悲しくなってくる。おじさん、ゴメン。

ひとつ、運が良いことに快晴。雲が全くない。雨よりはマシだとお天道様に感謝を述べながら歩いた。

茶臼岳の山頂からは富士山も聖岳もよく見えた。アルプスの稜線である。ただ、私が知っている北の景色とは随分違う。緑が多く山容はのぺっと大きく見える。景色がよく見えるとこんなに気分が良くなるものなのか。

右から上河内岳・赤石岳(かすんでいる)・聖岳・兎岳と思われる

再び歩き始め一人なのをいいことに歌を歌いながら歩く。茶臼小屋に水を汲みに行こうかと思ったが、標高を下げるのがあまりにめんどくさかったため通過することにした。聖平は近いしあそこには水場があると聞いている。

この選択が間違っていたことを数時間後に思い知ることになるのだが。

茶臼から上河内岳までの緩やかな稜線は散歩のような緊張感のなさでとても気持ちがいい。

地図にお花畑と書かれたひらけた湿地を通ったが季節が終わっているのか、やわらかそうな草が広がっているだけだった。

時に上河内岳分岐に到着した。荷物をデポして山頂までは空身で行くことができる。往復20分もかからないだろう。が、行かなかった。

私は生粋の面倒くさがり屋である。一度めんどっちいなあと思ってしまったら最後、次いつ来るかもわからない山頂さえ簡単に諦めてしまう。今回もそれが出てしまった。

その代わりに大休止をとった。休憩を取るのが極端に苦手なため普段の山歩きでもほとんど休まないし休んでも立ったまま5分ほどぼーっとしてまた歩き始めてしまう。自覚はないがせっかちなのかもしれない。

荷物を下ろして休んでいると遠くからヘリコプターの音が聞こえてきた。だんだん近づいてくるので見ているとどうやら自衛隊機のようだ。長野県側(易老渡側)の谷を何度も往復して私の目の前まで飛んできた。丹念に何かを探しているように見えた。そのうちどこかに飛び去っていったが、警察でも手に負えない遭難事故でも起きたのだろうか。訓練だったらいいんだけれど。

休憩を終え歩き始める。あとは聖平まで下るだけだ。南岳を少し通過したところで道の狭いトラバースがあったがそのほかは特に問題のない下り坂だ。

若い兄ちゃんと会った。挨拶をしてすれ違おうとすると
「あ、聖平、水、枯れてました」
「え?」
「水枯れてて少し探しに行ったんですけどちょっと見当たらなかったです」
「え?ほんまですか?沢ですよね?」
聖平小屋の水場は小屋隣を流れている沢だ。地図で見てもそんなに小さな沢のように見えなかったので一瞬信じられなかった。
「完全に枯れてました。今日は聖平までですか?結構下がらないと見つからないかもしれません」

なんというか、軽く絶望した。小屋に着けば水があると思って茶臼では給水しなかった。快晴でいつもよりたくさん水を飲んでしまっている。水がなかったら、どうしよう。次の確実な水場は百間洞山の家だ。さすがに歩ける元気ももちろん水もない。

数日続いた快晴の代償にしては大きすぎる。稜線直下の沢で枯れやすいのだろう。雪渓から水を取ることができる北アばかり歩いてきたため水問題を軽く考えすぎていたようだ。

ただ、どうこう言っても歩くしかないためとにかく小屋まで歩いた。嬉しいことに、樹林帯に入ると遠くで沢の音が聞こえた。100mも標高を下げれば何かしらの水場はありそうだ少し安心したが不安は消えない。

小屋に到着した。側の沢を見てみるが聞いていた通りカラッカラに枯れていて大きな岩が虚しく並んでいるだけだった。

普段はジャンジャン流れているのだろうか。

地図で大きそうな沢の位置を確認しそこまで下る覚悟を決めた時、水筒になみなみに水を汲んだおじさんが現れた。「沢、あかんね。20分くらいおりたら小さい湧き水があるよ」
天使に見えた。

椹島方面からの登山道を10分ほど下ると沢にも少しずつ水が見えるようになった。しかし、虫や汚れが目立ち飲み水には向いていないし煮沸する燃料も持ち合わせていない。

おじさんを信じさらに10分ほど下ると、一人だったら見逃していたであろう小さな小さな湧き水を見つけた。周りが苔でおおわれていることから常時染み出ている良質な湧水だと判断することにした。

1Lためるのに5分くらいだろうか。岩の隙間にソフトボトルを差し込んでなんとか5L分確保した。今日の飲み水と調理用と明日の行動分だ。心配性なので多めに汲んでおいた。

また小屋に戻る。晴れやかな気分である。行きは怖い帰りはよいよい。

飯を作り食らい沢で洗った洗濯物を干す。ストックに60スリングを絡ませカラビナで紐にかければ即席ハンガーの出来上がりだ。

自撮りなどしてみる

今夜の小屋は私を入れて3人。昨日からの顔なじみだ。

噂によると数日中に天気が荒れ始めるらしい。私の予定は、8/5百間洞山の家、8/6荒川中岳山頂避難小屋、であったが、水が枯れているかもしれないことと、天気が荒れる前に無人小屋地帯を抜け出したいことから、8/5赤石岳避難小屋、8/6高山裏避難小屋に変更した。

赤石岳避難小屋は水がないようなので百間洞から水を担ぎ上げなければならない。ハードな一日になりそうだ。

南ア全縦①

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