南アルプス全山縦走① 光岳

翌日3時に宿を立ち易老渡登山口の手前柴沢ゲートまで送っていただいた。2018年の台風の影響でそこから先は未だ通行止めだ。登山口で朝ごはんをいただき、昼のおにぎりを持たせてもらって5時に出発。

行動食とお昼のおにぎり
梅干し入りで登山向きでした

登山口までは林道歩きだ。通行止めと言うので復旧が滞っているのかと思っていたが想像以上に進んでいた。護岸は新しい今クートが張ってある、道もがれきは落ちていない。ただ、ところどころ小さな沢から土砂がはみ出しているのを見るとまだ危ないんだなと思えてくる。

まだまだ傷跡も

1時間ほど歩いて易老渡登山口に到着した。ようやく取りつきである。荷物は水を入れて25㎏ほど。北岳肩の小屋のアルバイトに入る友人に食料デポを預けておいたため少しだけ軽くなっている。嫌そうな顔をしていたが人の良さに付け込んで押し付けてやった。彼女には荷揚げカロリー分の行動食を渡しておいた。

まずは易老岳まで登り稜線を目指す。急登を500mあがり、面平、さらに1000mほど標高を上げ稜線に出る。もちろんかなりきついが曇っていることだけが救いである。快晴だと絶対に水が足りなかった。風が吹くと涼しくありがたい。

ガンギマリグマ会いたくない

10時前に易老岳に到着、稜線に出たので光岳方面に向かう。明日はこの道を引き返すことになる。原生林の中を歩く。地表を青々としたシダ類が覆い、ガスも相まって幻想的な風景だ。私がファンをやっている山画家の方に是非来ていただき絵を描いていただきたいものだ。素人ながら水彩画によく合うような気がするのだ。もし絵葉書になれば即座に買うし原画も購入して飾りたいところである。

1時間半ほど歩くと水場があった。光岳小屋の下にもあるとは聞いていたがついでにここで水を補給しておく。今回は6L分の水筒を持ってきている。キンキンに冷えた湧き水を汲んで小屋まであと20分ほどだ。

小屋に着いた。静岡県・市管理下の山小屋は今年は休業している。しかしありがたいことに小屋を避難小屋として開放しており、泊まらせてもらうことにしている。本当にありがとうございます。

荷物を置いて山頂に行く。もともと景色のない山頂だが、雲のおかげで余計何も見えない。だが、良い。一つ目の山頂だ。光岩も見に行ったがもちろん景色はない。小屋に戻った。

光岩

小屋に戻るとおじさんが一人到着していた。
巨大な100L ザックを背負い、北沢峠から縦走してきたという。私の逆ルートである。情報を仕入れなければ。聞きたいのは主に水場。小屋が営業していないということは水を引いていないところも多いだろうからだ。

と、彼、ザックの整理を始める。たくさんの行動食、非常食に続きウィスキーが出てきた。明日最終日だから減らしてくれんかと頼まれいただくことに。距離を置いて飲み会だ。

上司を脅して有給をとって歩いているらしい。台風で日程が延びた際に「無理に行動して遭難でもしたら新聞に社名でちゃうよ?」と言ったらしい。なるほど、社会人の知恵である。来年からはぜひ参考にさせていただきたい。

失礼ながら第一印象は地元のおじさんかと思っていたが、何かあればニュースに名前が出る規模の企業に勤務されているようだ。人は見かけによらないとはこのことである。

すきっ腹にウィスキーですぐに酔いが回った。話が弾む。私が来年からお世話になる会社とも仕事をしたことがあるらしく、「いいねぇ、いい会社選びましたねぇ」としきりに褒められた。まだ入社もしていなければ卒業すらしていないが悪い気はしない。「ナイス…ナイス、ナイス……選択!!」チョイスやセレクションの単語は出なかったらしい。きっと酔いのせいだ。

1時間ほどお話したところで突然
「ウオッシ!!」
と声を上げて立ち上がった。何事かと驚いていると、おもむろにザックの中からビニール袋と掃除用の大判ウェットティッシュを取り出した。
「トイレ掃除してきますね」

なんとトイレ掃除に向かっていったのだ。管理人さんがいない山小屋では、トイレの使用は登山者のモラルに委ねられる。できるだけきれいに使おうと皆気を付けてはいるが、やはりなかなか進んで掃除しようという気は湧いてこない。

「使用済み紙boxがいっぱいになったら袋を結んで外においておいてください」と張り紙はあるものの罪悪感にさいなまれながら見ないふりをしてしまう人も多いのではないか。私もそのうちの一人である。情けない話であるが。

千鳥足であるがその背中は大きかった。

掃除の様子を見ていたほかの登山者の方が、「あなたは本当に素晴らしい人だ!本当に素晴らしい!お名前教えていただけませんか」と話しかけた。彼は「いやいや、たいしたことじゃありませんし。」とはぐらかしていたが、さっきお酒飲んでいた時に私には教えてくれた。褒められれば謙遜して匿名を貫くとなんてクールな。

あとで話を聞いてみると、飲まんとやってられんよ!前の管理人さんに懇意にしてもらったから、と。クールだ。

結局この日小屋には7,8人泊まっていた。畑薙ダムから上がってきていた人も数人いた。日暮れ前に雲が取れ聖岳と富士山とれいな雲海を見ることができた。

7時ごろ就寝。夜小便に起きると満天の星空が広がっていた。今年初めての天の川である。
明日は晴れそうだ。

コメント

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