帰還せよ 北東の国原付の旅② 斜里岳・雌阿寒岳

2020.9.6

朝4時ごろに起き出して清里町営緑清荘に向かう。実は先日の羅臼岳で、斜里岳の登山口までは砂利の林道が7kmほど続くという話を聞いていた。アスファルトで舗装された坂道ですら十分な速度が出ない僕のカブでは到底辿り着けそうもない。

そこで、羅臼登山道で出会った男性に登山口まで送ってくれないかと頼んでいたのだ。東京から来たというその人(Iさんと呼ぼう)は宿まで来てくれれば一緒に行こうと言ってくださった。かくして緑清荘を訪ねたのだ。

車で出発して畑の間を走ると斜里岳が見えて来る。昨日まで雲に隠れていたものだからついつい2人ともはしゃいでしまってIさんは車を降りて写真を撮りだす始末だった。


林道に入った。噂の通りリトルカブにはかなり厳しい坂道が続く。スリップ防止なのか横溝が掘ってあってこれもバイクは苦戦するだろう。後から250ccバイクで上がってきた大学の後輩(前日偶然道の駅で遭遇した)曰く、めちゃくちゃしんどかったです。だそうだ。

週末ということもあって登山客は多かった。旧林道を歩いて沢筋に入る。一般登山道は延々と沢筋を上がっていくルートだ。

今年は水が少なかったのでトレッキングシューズで難なく歩けたが、水が多い年だと渡渉の繰り返しで厳しいルートになるようだ。

Iさんと一緒に湿った岩を這い上り、滝を眺めて、標高を上げていく。水に鉄分が多いのだろうか、川底の岩は赤茶色に染まっている。沢の詰めはほぼ沢登りのように滑滝をよじ登った。立ち往生する登山者を何度か手伝い水のパートを終えた。

あとは稜線まで駆け上がれば頂上はすぐそこだ。すぐそこだと言ってもかなりの傾斜が続く。えいやっと登ってしまいたい気分だったが、昨日の羅臼岳では僕がIさんを置いてぴゅーっと登ってしまったため今日は「昨日みたいに先に登っちゃダメだぞ。」と釘を刺されていた。

のんびり登る山もまた楽しいものだと改めて気づかせてくれたと前向きにとらえることにした。


稜線に出るとオホーツク海と知床半島がすぐそこに見えた。足元の崖にはもうすぐ紅葉を迎えるであろう木々が隙間なく生えており、生命力に圧倒される景色であった。稜線上は少し風が強く雲の子供が現れては消えている。

急いでも仕方がないので一歩一歩を踏み締めながら最後の坂を登り頂上に立った。

素晴らしい景色だった。オホーツク海と知床半島、「日本一美しい村連合」に加盟している清里町が一望できる。知床半島の東側には国後島がかすんで見える。カヤックでも日帰りで往復できそうな距離だ。南西には摩周阿寒国立公園であろう山塊が見える。今日中にあそこまで行くのかと思うと遠く感じる。

昨日一昨日は山頂は一切見えていなかったのだが今日は雲はほとんどかからない。風は強いが一枚羽織れば十分だ。原付をブイブイ言わせて北海道を渡ってきた甲斐があるというものだ。

下りは熊味峠経由で稜線を歩いて帰る。
途中、龍神の池という看板を見つけたので寄ってみたが想像以上に素晴らしかった。直径2m深さは1mほどだろうか、澄んだ水がたまった池がポツンとあった。池の形がこんなにはっきりしているのは不思議だ。

後で調べてみるとやはりこの山の川には大量の鉄分が含まれており水が湧く場所では鉄釜と呼ばれる褐鉄鉱床ができあがると書いてあった。なんにせよ良いものを見た。

龍神の池から稜線に登り返して歩く。登りでは拝めなかった斜里岳山頂が目の前にどっしり座っている。気持ちのいい稜線歩きを終えきれいな景色に別れを告げる。旧坂を駆け下り下山した。

車で緑清に送ってもらったあとお風呂をごちそうになり解散。僕はIさんは帰京、僕はカブに乗り換え南へ向かった。

Iさんとはたくさんお話したが、賢い方だということがひしひしと伝わってきた。好きな作家や学歴などに共通点があったため話が弾んだ。

二回りは離れているであろうガキの話にも熱心に耳を傾け、適切な返事と相槌をしてくれる。人生の先輩として驕ることなく自身の話をしてくれて、普段は退屈になりがちなオジサンの話をこちらも心地よく聞くことができた。

同年代の友人と会話しているかのような感覚にもなったがそれを越えてくる内容の身の上話や知識の豊富さで成熟した大人のカッコよさを見せつけられた。身に着けているものからもうかがえる、世の流れ敏感に察知し自らのスタイルに落とし込む熱量を僕も持つことはできるだろうか。

車から斜里岳を眺めているときも「いやあ、すごいなあ。すごいなあ、ちょっと写真撮ってくるね。」と無邪気さを失わず活き活きとした性格に恥ずかしながらこちらが元気をもらったのだ。
就職活動で東京に来たら遊ぼう、と言ってもらえたので次に会うのが楽しみだ。僕の「こんな大人になりたいリスト」に追加されたことは言うまでもない。

こんなことを考えながら日が沈みかけた阿寒湖への坂道をノロノロ登って行った。

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